現場の声を国に届けよう!支援者学習会を開催

2025年8月10日。「愛知夜間中学を語る会 はじめの一歩教室」は教室支援者のための学習会「学習者の貧困を考える 外国人と社会保障」を名古屋市内で開いた。講師は弁護士の森弘典さん。支援者ら9人が出席した。

 森弁護士は憲法と世界人権規約などの条約によって保障された外国人の教育を受ける権利と国の義務について説明。1981年に日本が批准した外国人の地位に関する条約では、日本政府は外国人に対し、自国民に与える待遇と同一の待遇を与えることを国際社会に約束した。この条約が示す内外人平等原則はしかしながら、運用の現場では貫徹されていない。例えば生活保護制度の保障について運用の不服がある場合、自国民は不服申し立てができるのに対し、外国人は、1954年の「局長通知」によって不服申し立ての権利が奪われている。このように条約の定める原則と、制度の実際の運用の間で、自国民と外国人との対応の違いが生まれていると説明した。

 日本語の学習を必要とする児童生徒の数が全国最多の愛知県では、外国人の学習の権利の保障は重要だ。地域社会の現実のなかでこうした児童生徒が義務教育の学校で学ぼうとする場合、日本語教育の充実が求められている。しかし学習指導要領に日本語教育の扱いが明記されていない。このため事実上こうした児童生徒は授業の内容についていくことが困難となり、学力低下、不登校、いじめなどの問題が発生する原因の一つになっている。

 今年度開設された愛知県立、名古屋市立の夜間中学の入学者の中に外国ルーツの子どもが多いことは、従来の昼間の小中学校が外国人児童生徒の増加という地域社会の現状に対応しきれていないことを示している。名古屋市立なごやか中学校では、授業中に教員免許のない複数のボランティア「市民サポーター」を教室に招き生徒をサポートする試みを実践し、生徒の理解を促す工夫を実践している。それは現実の必要がそうすることを求めているためだ。

 こうして国の施策や検討のスピードが遅いため、地域社会の問題に日々直面している都道府県、市町村は対応に苦慮し続けている。こうした事情もあり7月30日、全国知事会は多文化共生社会の実現に向けた全国知事会の提言を法相に手渡した。このなかで、検討チームのリーダーを務めた鈴木康友静岡県知事は、「これまであいまいにしてきた外国人の受け入れについて、国の基本的考え方を示し、それを基本法というかたちで明文化すべきであり、それと同時に施策を一元的に行う組織を設置すべきだ」と話した。

 基本的な法と一元的な組織がないために、議会の承認が不要な行政官庁内の通達などの対症療法的運用を続けてきた結果、外国人の生活保護分野や入管行政の現場で一貫性のない恣意的な対応が繰り返されている。

 社会の変化に法整備が追い付かないために生じているこうした問題について、森弁護士は、「現場の状況を一番わかっているのは都道府県などの地方自治体だ。彼らは本当に困っている。こうした問題を解決していくうえで現場の声を国により積極的に届け、世論を喚起していくことが重要だ」と述べた。支援者からは日常の教室運営でみられる様々な問題が提起されたが、即効性のある解決は困難であることがうかがわれた。

 森弁護士は、生活保護費削減の違法性を訴え最高裁で6月27日、勝利判決を引き出した全国規模の裁判闘争にも大きな役割を演じている。

自主夜間中学はじめの一歩教室

日本に住む外国の人たちへ日本語支援と教育支援

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